STEAM教育・保育とは?
今、話題になっているSTEAM教育・保育について、ご紹介したいと思います。
STEAM教育とは? 保育園・幼稚園や小学校での実践例もご紹介! (conobas.net)から、主に幼児期の教育・保育について抜粋しています。
STEAM(スティーム)教育とは、AIなどの技術革新の時代に生まれた、教育手法の一つです。
ここでは、STEAM教育の意味や、話題となっている背景について紹介します。
「STEAM」は5つの略称
「STEAM」は、5つの要素の頭文字を組み合わせた造語で、それぞれ、
S=Science(科学)
T=Technology(技術)
E=Engineering(工学・ものづくり)
A=Art(芸術・文化等)
M=Mathematics(数学)
を表しています。
STEAM教育が話題となっている背景
「STEAM教育」の前身である「STEM教育」は、2000年代にアメリカで始まり、オバマ元大統領が演説で話題にしたことから有名になったと言われています。
日本では、2019年に文部科学省が「STEAM教育の推進」について述べ、教育の新キーワードとなりました。
「AIやIoTなどの急速な技術の進展により社会が激しく変化し、多様な課題が生じている今日、文系・理系といった枠にとらわれず、各教科等の学びを基盤としつつ、様々な情報を活用しながらそれを統合し、課題の発見・解決や社会的な価値の創造に結び付けていく資質・能力の育成が求められています。」
(文部科学省HPより「STEAM教育等の各教科等横断的な学習の推進について」)
簡単に言い換えると、「これからの時代において、自分で課題を見つけ解決していくために重要な力」と言うことができます。
そんな力をつけるためにSTEAM教育が重要な役割を果たすとされています。
STEAM教育で子どもにどんな力がつくの?
「STEAM」の5つだけを見ると、「理数系の教育に力をいれるのかな」と感じる方もいるかもしれません。
しかしSTEAM教育の一番の目的は、理系の得意な子どもを増やすことではありません。
STEAM教育では、各教科での学びをベースにしながら、いろいろな情報を組み合わせたり、新たなものを生み出したりして教科の枠組みを超えた学びを展開していきます。
子どもが自分で課題を見つけ、自分なりの解決方法を考え、自分で実践していくというスタイルを大切にすることで、論理的思考力や問題解決能力を育む教育手法です。
そういった力をつけることで、これからの社会の変化にも対応できる人間に育つと考えられています。
プログラミング教育はSTEAM教育のごく一部
「プログラミング教育」というキーワードはご存じの方が多いのではないでしょうか。
今や小・中・高校で必修となったプログラミング教育ですが、「プログラミング的思考」と「STEAM教育」には通ずる部分が多いのです。
小学生でのプログラミング教育のねらいは、プログラミングスキルを身につけることよりも、プログラミング的思考を身につけることと言われています。
プログラミング的思考とは、簡単に言うと、論理的な思考力・想像力・問題解決能力・行動力などを指します。
ここまでお読みいただいて、「あれ?さっきも見た言葉だな…」と感じたことでしょう。
先ほどの、STEAM教育の考え方と重なる部分が多いですよね。
つまりプログラミング教育もSTEAM教育の一部であり、物事に対して自分で課題・解決方法を見つけていく力を養うための教育なのです。
保育園・幼稚園でのSTEAM教育 実践例
幼児期からSTEAM教育に取り組むことで、因果関係の理解や論理的な思考は大きく育ちます。
実際にモノを操作したり、自然体験をしたりして、五感をめいっぱい使いながら「どうしてかな?」「どんなしくみなんだろう?」「どうやったらできるかな?」と考える機会をたくさん作ることがポイントです。
実は、保育園や幼稚園での活動の中には、このようなSTEAM教育の初歩と言える活動がちりばめられています。
満足いくまでじっくり取り組める時間が確保されており、やってみたいことが実現できるような環境が設定されているのも園の特徴です。
STEAM教育実践例1|工作
節分や七夕などの季節に合わせた工作をしたり、空き箱などを使った廃材工作もSTEAM教育につながります。
箱をバランスよく組み合わせたり、自分の作りたい形に近づくように配置を変えたりすることは、E=Engineering(工学・ものづくり)のスキルです。
はさみやのりなどの用具を使って切ったり貼ったりすることもものづくりの初歩と言えます。
園では、スタンプやマーブリングなど、美術的な技法が用いられることも多く、A=Art(芸術・文化等)のスキルにつながります。自分の選んだ色・素材で製作することを自己表現の一つと捉え、一人ひとりの思いをじっくりと叶えられる活動でもあります。
また、友達の作品を見て新たなアイデアが浮かんだり、「どうやって作るの?」とコミュニケーションのきっかけにもなります。
さらに形・角度・長さの概念に触れることは、M=Mathematics(数学)のスキルにもつながります。
特に折り紙は、正方形の紙を使うため、長さや角度への理解が深まる遊びです。
STEAM教育実践例2|自然体験
多くの園では、花や野菜を育てたり、季節の植物を楽しんだり、虫を飼ったりする自然体験を大切にしています。
触ったり、においをかいだりと五感を使ってめいっぱい自然と触れ合います。
自然と触れ合っていると、知らなかったことや予想外のことにたくさん出会います。子どもたちの「これは何?」「どうして?」という素朴な疑問が、S=Science(科学)、 T=Technology(技術)のスキルにつながっていきます。
また、知りたいことを調べられる本や図鑑が整っていると、「知りたい!」と思ったときにすぐ調べることができます。
これも保育園・幼稚園の大切な環境設定です。
STEAM教育実践例3|科学遊び
保育の中では長年取り入れられているのが、科学遊びです。
言葉の通り、S=Science(科学)の遊びです。子どもたちにとって身近なものを使って科学的な事象に関心を持たせます。
具体的には、
・氷はどうして水になるの?(温度、氷点、状態変化の概念)
・寒い日の息が白いのはなぜ?(水蒸気、温度の概念)
・糸電話を作ってみよう(音、振動の概念)
・カブトムシを育てよう(生物、命、環境への意識)
・野菜やお花を育てよう(植物、環境への意識)
などが挙げられます。
私たちの生活の中には、科学的な事象がたくさんあります。
その1つ1つを題材にして、子どもの「どうして?」「他にもあるかな?」「もっと調べたい!」という思いを引き出していきます。
STEAM教育実践例4|知育玩具
保育園や幼稚園には、知育玩具と呼ばれるおもちゃが整えられています。
子どもの知的好奇心を引き出したり、思考力・創造力を伸ばしたりすることのできるおもちゃです。
・積み木、パズル、ブロック
いろいろな形のパーツを組み合わせて遊ぶおもちゃです。小さいころからこのようなおもちゃでたくさん遊んでいた子は、空間認識能力が高くなる傾向があります。
空間認識能力とは、物の場所・形・向き・大きさ・速さ・位置関係などを認識する力です。平面ではなく立体・3次元の認識のことを指します。
・オセロ、トランプ、ウノ
子どもでも分かりやすいルールのボードゲームやカードゲームです。勝敗がつくので、子どもは一生懸命取り組みます。勝つためには、戦術も必要です。
「自分がこのカードを出したら相手はどうするだろうか」「このカードは最後までとっておこう」など、相手の出方を探ったり、先を見通したりする考え方が身につきます。
STEAM教育実践例5|先生の言葉かけ
保育園や幼稚園でのSTEAM教育で最も大切だと言えるのは、先生の言葉かけです。
先生の言葉によって、子どもたちの思考力はどんどん伸びていきます。
・「どうしてくっつくんだろうね?」「どうしてかな?」
疑問や課題を投げかける声かけです。
こんな言葉をかけられた子どもは、「なんでだろう、気になるな…」「他のものだとどうなるんだろう。調べてみよう」と因果関係を考えたり、探求心につながったりしていきます。
・「どうやったらできるかな?」「やり方を知っているお友達はいるかな?」
解決までの道筋を考えさせるための声かけです。
子どもは、やりたいことの完成イメージが思い浮かんでいても、完成するまでの流れや手順はパッと思いつかないこともあります。
そんなときにこんな言葉をかけられた子どもは、「どんな材料がいるかな」「○○くんが似ているものを作っていたから、やり方を聞いてみよう!」と自分なりの解決方法を考えることができます。
計画的に進めること、先を見通すこと、試行錯誤することにつながっていきます。
ありんこ親子保育園の取組み
ありんこ親子保育園では、空き箱工作や季節の制作、自然体験、知育玩具遊び等を通して、自分で課題を見つける、自分で解決できる方法を考える、論理的思考力を鍛えるなど、将来につながる力を育てる取り組みを行っています。それが、今話題の『STEAM教育・保育』にも当てはまると考えます。今、何かができることが重要ではなく、成長は遅くともしっかりとした土台づくりをする方が子どもはたくましく育っていくことでしょう。そんな子どもたちの力を信じて、ワクワクしたり、ドキドキしたり、試行錯誤しながら、未来に向かって伸び伸びと育つよう支援しています。